■クラブ
シャーロック・ホームズの兄、マイクロフトはペルメル街にあるディオゲネス・クラブの会員だった。このクラブはかなり変わっていて、「もっとも人づきあいが悪く、もっともクラブ嫌いの人間が入っているのだ」、(『ギリシア語通訳』より抜粋)とホームズが説明している。
さて、上流階級の社交の場として幾つものクラブが19世紀になると次々に創立された。気の合った者同士で集まるのが始まりだったので最初からかなり閉鎖的で、更に女性を客としてクラブ内に連れて行く事はあっても、女性は会員にはなれなかった。(現在では女性会員が認められているクラブもあり、女性だけのクラブさえある)
また多くのクラブがペルメル、セント・ジェイムズ街、ピカデリーなどにある。これらの辺りにはバッキンガム宮殿や官庁街、国会議事堂があり、ここに位置しているということが特権的でもあった。
会員になるためには現会員の推薦がなければならず、全会員の同意が必要である。その際には白と黒のボールが投票に使われる。白がyes,黒がnoで、黒が一つでもあれば候補者は入会できない。
全て白で入会が認められると、高額の入会金を払って年会費も納めるのである。
高額の会費は、クラブ・ハウスの造りや料理に反映されている。壮麗なファサードや、豪華な調度品のサロンや食堂、喫煙室、豊かな蔵書を誇る図書室などを備えていた。また、腕のいい料理人を雇えるので、食事だけをしにクラブに足を運ぶ会員もいた。
尚、クラブの入り口には看板や案内といったものは無い。 |

■パブ
「パブリック・ハウス」の略。誰でも気軽に立ち寄れる庶民の社交場である。当時も現在もパブの役割は変わらないが、ホームズの時代ではちょっとした階級社会をのぞかせるものがあった。労働者階級(パブリック・バー)と上流階級(プライベート・サルーン)では出入り口のドアが違ったのである。
内装も雰囲気も値段も違ったのだがまったく問題はなかった。(現代においては、入り口が二つでも中は繋がっていたり、当時の言葉のままに「プライベート・サルーン」として間仕切りをし、特別室にしていたりする)
注文するごとに料金を支払うシステムは今も変わらない。
「イン」は宿泊施設があって食事もでき、バーもある。「エール・ハウス」はその名のとおりビールなどお酒を飲ませる場所で宿泊もできたようだし、「タヴァーン」は食事をする所だがお酒も出すので居酒屋といったところか。
こういった施設がパブの始まりである。 現代では、宿泊できない「イン」があったり、名前に「タヴァーン」は付いているが、食事をすべしとの決まりがあるわけではない。
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